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ギブアンドフレンズ!

3,936 字

ファンタジー冒険譚、友情物語

"純粋な心が開く、新たな冒険と友情の扉。"

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1話
 トルテは窓から顔を出すと、グラデーション状に広がる青い空。柔らかな日差しが肌を撫でた。
 
 ザパーン、ザパーン
 
 波が崖に押し寄せる音を聞くと思わず口角上がった。
 
「決めた!やっぱり旅に出よう!」

 日差しが窓から差し込む、狭い部屋。脱ぎ捨てられたような服が散らばっている。
 
 威勢のいい声が部屋いっぱいに響き渡った。

 部屋の外から小さな足音が聞こえてきた。キィと木が軋み扉が開くと、落ち着いた声が聞こえた。

「もう……突然叫んでどうしたの?」

 黒髪のパーマにコートを着た青年が眉をひそめ苦笑いをしている。

 目をキラキラ輝かせ、ぱっと振り向いた。

「俺、旅に出たいんだ!」

 青年は口をポカンと開けた。

「あぁ、前から旅に出たいって言ってたもんね」

 黄土色の目を細め、微笑む。

「今年の大会、もうすぐだよね」
 
「うん!優勝したら願いを叶えてもらえるんでしょ!」

「だから旅にでたいんだ!」

 そうと決まれば急いでご飯をかけこみ、荷物に食べ物や服を押し込んだ。
 トルテは白いパーカーを羽織る。
 
 階段を円を描いてドタドタと元気な足音を鳴らしながら、勢いよく駆ける。

「もう行っちゃうの?」

 青年は少し俯くと、それから静かに口を閉じた。
 
 いつか旅にでることも知っていた。でもいざそのときが来ると寂しかった。

「うん!ネルト、料理上手なのに珍しく血がついてるね」

 ネルトは服に目をやると、エプロンを摘まみ、首をかしげた。

「うーん……いつ、ついたんだろう?」

 靴のかかとを合わせ、トルテはドアノブをグッと強く押した。
 ネルトのほうを少し目を伏せて視線を向ける。

「じゃあ、行ってくるね!」

 ネルトをまっすぐ見て、生き生きした明るい笑みを浮かべた。

「……行ってらっしゃい」

 大きくうなづきながらゆっくりとトルテを受け止めるように微笑んだ。
2話
 どこまでも広い草原を駆け抜ける。
 草が足をくすぐる感覚がする。ヒューと風が背中を押すように吹いた。

 視界いっぱいの緑や空に夢中で走っていると、小さく茅葺き屋根のようなものが見えた。

「あっ!村かな?行ってみよう」

 トルテは新しい出会いや体験を求め、わくわくしながら身を任せた。

 

「こいつの情報収集を頼む」

 少女は渡された資料をそっと手に取ると、眉間にしわを寄せた。

(まだ子供じゃない……)

「了解しました」

 両手を前で組んで、目を瞑りお辞儀を交わす。

  

 しばらく走ると茅葺き屋根が近くなってきた。

 ジャリ、ジャリ
 
 靴越しにボコボコとした石の感覚がする。土に草がちょっぴり生えている。
  
「ここが村かぁ……!」

 わらわらと住民達の楽しそうに話す音が聞こえてくる。藁やレンガでできた家並み。水の流れる音が聞こえる。川が近くにあるようだ。

 トルテは村の大通りをキョロキョロと見回しゆっくり進む。
 小太りで元気そうなおじさんや八百屋や筋肉質でいかつい防具屋の店主など、トルテは村にくることは初めてのことで胸を期待でいっぱいになった。

 「美味しそう!」

 りんごを手に取ると、水滴が反射しキラリと光る。

 「若い冒険者だねぇ!買ってくかい?」

 鼻を擦り、自慢げに腕を組んだ。

 サ……ササッ

 すると、微かな物音がトルテの耳に入った。

 トルテは足を止めた。

 何かがいる気がする……
  
「あれ?誰もいない……」

 危険を感じ振り返ると、誰も見当たらない。

 明かりのない路地に素早く飛び込んだ。人気のないあたりまで駆け抜ける。

「おい!そこにいるんだろ!」

 トルテは大声を張り上げ身構えた。路地に大きな声がこだまする。

 ヒュー……ザクッ!

 風を切るような音がして、目にも留まらぬ速さでサバイバルナイフが壁に突き刺さった。
 トルテの背後が凍る。
 
 すると何本もの鋭いナイフが路地の奥からトルテをすれすれで狙う。

 「う、うわぁ!」

 トルテは足を滑らせこけそうになりながら路地を走る。

 「どこから飛んできてるんだ!?」

 不思議なことにナイフを投げている本人が見当たらない。畳み掛けるようにナイフが飛んでくる。

 トルテは飛んでくるナイフを必死によけながら暗い路地を抜ける。円のように開けた大広間に出てきた。

 「うぅ……見えないんじゃ攻撃できないよ」

 トルテは転がるように家と家の隙間に隠れた。

 「どうする……どうする……」

 ちじこまるように木でできた箱に隠れて、目をきゅっとつぶって思考を巡らす。

 「あっ!そういえば……」 
3話
 一年前——。
 
 「いい?敵を見つけるには音を探るといいよ」

 夜風が髪を揺らす。ネルトはトルテを優しく見つめ、手すりに手をかけた。

 「音?目じゃなくて?」

 トルテは頭に?マークを浮かべ首をかしげる。

 「足音できずいた方が場所を隠れていても特定できる。物音とかもね」

 ネルトは夜空を見上げ、小さく光る星を眺めた。
 ネルトを食い入るように見つめる。

 「へー!ネルトってすごいね!」

 トルテはネルトに体を向けた。自分より背の高いネルトを見上げ、お互いニコッと笑う。

 「そうだ……!音」

 教わったことを思い出しながら、目をつぶり聞き耳を立てる。

 さく、さく

 静かに足音が聞こえる。その音はだんだんと大きくなっていく。
 
 さく、さく

 「まだ、まだだ……!」

 頬に汗を書きながら、腕に力を精一杯溜める。

 さく

 「よし!今だ!」

 素早く隙間から飛び出し、トルテは家の隙間から少し出たあたりを、思い切り拳で殴った。

 「っ!」

 空気を揺らしながら対象はふきとぶと、壁に強く打ち付け亀裂ができた。
 ぽろぽろと破片が地面に落ちる。

 すると、亀裂の中心が光を伴い点滅した。ゆらりと姿が浮かびあがる。
 透き通る銀髪をさらっとなびかせた。ふわふわしたファーがついたコートを身につけた少女。

 「わー!思ったより吹っ飛ばしちゃった」

 少女の方へ小走りで向かう。腕からポタポタと血が滴る。

 「大丈夫?ごめんね今から止血するから」

 少女は壁にもたれかかり、トルテを澄んだ青い瞳で見つめた。

 「なんで……私は敵なのに」

 少女は弱弱しい目でトルテに視線を向ける。

 「そんなの、誰だって痛い見るのは嫌だからだよ」

 トルテは傷口を消毒し、真剣な眼差しで腕に包帯を巻いた。
 今は敵なんてことは少女の痛さに比べたら、どうでもよかった。
 少女はかすむ視界でトルテを見つめた。
4話
 「……よし!これで大丈夫だよ」

 トルテはきゅっと優しく包帯を結んだ。

 「あ、ありがとう……」

 少女は少し照れくさかったようで、目を伏せた。

 「よかった~大怪我じゃなくて」

 トルテは額の汗を拭う。
 トルテを少女はジッと見つめ、立ち上がって埃を払った。

 「あなた、強いのね。透明化を見破るなんて」

 少女はいままでと表情をカラッと変えた。
 冷静に、でもどこか子供っぽく微笑んだ。

 「でも、暗殺者の仕事としては失敗かしら……」
 
 少女は傷を抑え、太陽に背を向ける。

 「見逃す……なんて無理だもの」

 少女瞳からハイライトが消えた。
 トルテは立ち上がって後ろにそっと近づいて、少女の目の前に立ち塞がった。
 
 「え!全然いいよ?だって悪い人には見えないし」
 
 優しいその笑顔は太陽のようだった。
 少女は固まると、ふたたび目に光りが戻る。
 
 「っぷ……」

 口元が緩み、腹を抱える少女。

 「なにが面白いの!」

 すねた表情で手をグッと握った。

 「だって……めちゃくちゃなんですもの」

 ふふふと肩を揺らして笑う。

 「めちゃくちゃじゃないよ!だって周りに被害がでないように戦ってたもん!」

 トルテはぷんぷんと怒る。少女は笑いが止まらず、壁に手をついた。

 しばらくたち——。

 「あっ!そういえば……」

 あたりは真っ暗になり、民家から漏れた光が二人を照らす。肉のようないい匂いがする。

 「友達を探してるんだ!一緒に冒険する仲間を」

 意志の通ったさっきと違う小さな声。壁伝いに歩く二人。

 「仲間?」

 「うん!旅に一緒にでてみたいんだ」

 「そんなもの邪魔なだけじゃない」

 少女はため息をついた。

 「そんなことないよ!」

 突然の大声に肩をすくめた。

 「仲間といると楽しいし、幸せだよ」

 真面目な表情で語りかける。

 少女はぼんやり遠くを見つめた。

 「……。」

 この子となら友達になれるかもしれない。
 強く手を胸の前で握る。

 「私も、ついて行ってもいいかしら……」
 
 喉から声を絞り出す。
 トルテは少女の方にはっと顔を向けた。頬を赤らめている。

 「いいよ!やったー!」

 トルテはその場で飛び跳ねる。煙のような砂ぼこりが飛んだ。

 「ちょっと!近所迷惑よ」

 焦ってトルテの肩を抑えた。トルテは頭をかきながらごめんごめんと謝る。

 「そういえば、名前はなんて言うの?」

 興味津々にトルテは顔を近づける。少女はクールに微笑む。

 「セリナよ。これからよろしくね」

 「セリナかぁ……!よろしく!」

 二人は顔を合わせ、ハイタッチを交わした。

 

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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