「特急おおぎり」という列車は、一昔前の鉄道ファンならば誰であっても聞いたことがある列車である。
しかし一般の人間にはその列車はほとんど知られていない。現代ではこの列車の存在すら知らない鉄道ファンもいる。
もしこのまま「特急おおぎり」の記憶が消失してしまえばそれは鉄道の歴史においての大損害となる。
そういうわけで、このたび「特急おおぎり」の記憶を持つ同志たちに集まってもらい、この「特急おおぎり」の思い出に浸りながらかつての姿を思い出してもらった。
鉄道に興味がある方もない方も、ごゆるりと楽しんでいただきたい。
「特急おおぎり」は南方向に行く特急である。たまに間違えて北方向に行くので、運転士はブレーキが手放せない。
「特急おおぎり」の車内放送は車掌が行う。使用される言語は日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、エスペラント語である。
「特急おおぎり」は岡山行きの列車である。始発は豊原駅で、日本を縦断する。駅名のせいで、台湾の列車だと勘違いされることが多々ある。
「特急おおぎり」の車内チャイムはクラシック音楽を使用しており、主にベートヴェンの交響曲第5番を使用している。
「特急おおぎり」の車両はブルドッグである。キハ80形の愛称ではない。ブルドッグなのである。
「特急おおぎり」の乗客はいつも窓の外を見つめている。「717」「737」「747」「757」「767」「777」の看板を必死に探しているのである。
「特急おおぎり」は時々レールを食べながら走る。そして食べたレールは後輪から排出される。運転に支障はないが、その時乗客はレールのない地面の上を走っているのである。
「特急おおぎり」の乗務員は全員話上手である。理由は列車の運行上、話上手になる必要があるからである。
「特急おおぎり」は時々「臨時特急しょうてん」として走行される。
「特急おおぎり」の昔の名前は「急行とんち」だった。
「特急おおぎり」のライバルとして、近隣の私鉄は「特急まんざい」を走らせていた。車両は全く見た目が同じであるし、中身もさほど変わらない。
「臨時特急しょうてん」は、「特急おおぎり」の車両と「特急まんざい」の車両を連結して運転する。
「特急おおぎり」の汽笛の音は乗客の笑い声である。
「特急おおぎり」はまれに列車の上下が逆の状態で駅に到着する。安心して欲しい。重力も逆になっているから。
「特急おおぎり」の写真を撮ろうとしたら必ずブレが起きる。どうやらシャッタースピードに合わせて速度を変えているようだ。
「特急おおぎり」は特定の駅を通過したときに「ただいま通過しました」とアナウンスし、次の駅で降りる乗客の準備を促す。
「特急おおぎり」は寝台列車ではないが、たまに遅延した時のために一応寝台車も連結している。もちろん昼間でも寝ることができる。
「特急おおぎり」はなぜか車内で眠る人が多く、誤って終点まで乗ってしまい、運賃を大量に支払う客が多い。
「特急おおぎり」の車内には常に「レールに敷かれた人生、虚しくないですか?」という広告がある。
「特急おおぎり」は途中で野球場を経由する。リリーフピッチャーが列車から投球し、球速256km/hの日本記録を達成した。
「特急おおぎり」の仕組みに着目したアメリカの鉄道会社が同じ仕組みの列車を作り、アメリカンフットボールの選手に乗車させることで簡単にトライさせる仕組みを作った。
「特急おおぎり」はたまに運転中に寝る。いいじゃないか、毎日疲れてるんだよ。
「特急おおぎり」は急勾配に弱い。止まってしまったら、乗客が車両の後ろを押して進まないといけない。
「特急おおぎり」では、車内の揺れに耐えきれない時のために、緊急脱出ボタンがある。ボタンを押すと、車内の揺れが完全に消える。
「特急おおぎり」では車内サービスを行っていた。食べられる料理がフレンチのフルコースか、懐石料理しかないというのが傷だが。
「特急おおぎり」の窓は天井まで届いていた。
「特急おおぎり」は慣性が作用しない。列車の後ろ側、連結部分のドアが空いている理由はそこにある。
「特急おおぎり」という列車は存在しない。これはただ、夢見心地の少年だった男たちの空想である。
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