虹が燃えている。
どのように、と言われると困る。燃えているのである。メラメラではなく、ゆらゆらではなく、その輪郭が空へと蜃気楼の腕を伸ばしている。
「見て、あの虹。燃えてるよ。」
「ほんとだー!」
妻と娘は、そんな虹を見つめている。
僕は初めて見たはずだし、娘も虹というものを初めて見たであろうなのに、燃える虹を眺めている。
虹自体を見る目と、この燃える虹を見る目の違いはわからない。おそらく綺麗だと思うか、恐ろしく綺麗だと思うかの違い程度だと思うが、その中にあるものは全く見えない。
「燃えている虹はね、色の数だけお願い事ができるんだって。」
「おねがい?」
「そう、お願い。」
そう言って、妻の瞳はまたあの虹を見ていた。
「じゃあ、おかあさんとおとうさんがずっとなかよくできますようにっておねがいする!」
妻は少し唇を開いて、それから笑った。
「そっか、ありがと。じゃあ、私は。」
それだけ言って、妻は少し唇に手を当てていた。
「そうだね、私は……ずっとみんなで元気にいれますようにってお願いする。」
妻の瞳は、少しだけ潤んでいて、娘の顔をじっと見ていた。
きゃっきゃと娘が笑う声が聞こえてきた。
きっと、妻と娘だけでもやっていける。
燃えていた虹は、緩やかに天へと昇っていった。
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