ガタン、ガタンと車輪の音が響いている。温度のない車内には人はほとんどいなかった。外はすっかり日が落ちて、空は紫色に染まっていた。
ドアの窓に、黒いギターケースを背負った自分が写っている。うなじを触るショートヘアに黒い目。その後ろでは、男の人が脚を広げてスマホをいじっていた。
ドア横の銀色に輝く棒を握りしめる白い拳と、紺色の袖。袖の中には無数の赤い傷跡がある。ケースの肩ひもを握っていた手を離して、袖の上から傷跡を手のひらで触った。脳裏に、赤ペンで"70"と書かれたテストを握る母の姿が浮かんで、ため息が出た。
「どうしてできないの!」
母の甲高い声が頭をよぎる。そんなの、僕にだってわからない。目が熱くなって、鼻がムズムズしてきた。窓に映る自分の像が揺れていた。
急に身体が右側に重くなった。そして目の前に白い蛍光灯の光が入ってきた。それが線から点へと変わった。プシューとドアが開くと、青臭い匂いの風が僕の目を乾かした。
肩のギターケースを抱え直した。ライブハウスの熱い光とうるさいドラムが蘇って、胸が高鳴った。
ドアの閉まる音で、我に返った。身体が左に傾いた。後ろで座っていた男の人はもういなくなっていた。ガタン、と車輪の音が響いた。
夜の電車
孤独と再生を描く心理的掌編
"傷跡を抱えた魂が、夜の静寂を抜けて熱狂へと揺らぐ瞬間。"
家に帰る少女の話。
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