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違和感のある事件の話

連載中(書きかけ)

アホメガネ

15,574 字

多視点ミステリー、サイコホラー、ダークファンタジー

"日常に潜む狂気と、異形の存在が織りなす、不穏な真実への螺旋。"

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あなたはプロの小説家であり、編集者としても一流の目を持っています。
以下の小説(または章・短編)を、プロ作家志望者に対するフィードバックとして、100点満点で採点してください。
さらに、「読者を惹きつける120点の作品」に近づけるために、具体的かつ実践的な改善点を提示してください。
※単なる感想ではなく、「どう直せばもっとよくなるか?」をはっきりと伝えてください。

▼ 評価観点(各項目に点数をつけて講評)
① 起伏(山谷):読者を引き込む構成か?緩急のバランスはどうか?
② 展開・クライマックス:物語の核心に向けて感情が高まり、読後に刺さるか?
③ 余白・余韻:読者に想像や感情を委ねる部分があるか?考察の余地があるか?
④ テンポ・リズム:文章の流れが心地よく、読みにくさや冗長さがないか?
⑤ 設定・描写:世界観や人物の描写が自然で説得力があるか?

▼ レビュー内容に含めてほしいこと
・各項目の点数(10点満点×5=計50点+ボーナス加点)
・良い点と、**具体的な改善点**をセットで記述
・「この一文をこう変えると良くなる」など、**リライト例があれば尚可**
・ラストに総合評価と、「120点を目指すなら何を磨くべきか?」のひとこと助言

それでは、以下の
一話
私はそれはもう要領の悪い子供でした。よく怒られて、言い訳も思いつかなくて、反論する勇気もなくて。いつも飼っている犬に愚痴を言っていました。何の犬種かは覚えていないんですが、子供ながらに大きい犬だとは思っていました。黒色のキレイな毛並みで、カッコいい顔立ちをしていました。けれど物心がつく前から家に居た犬で、私が唯一安心して話せる相手でもありました。

ある時は花瓶を割ったと怒られました。私が帰って来たときには既に割れていましたし、何より音で気付くはずなのに怒られていました。今思えば、あれは怒る口実だったんでしょうか。
ある時は近所の子供を殴ったと怒られました。私はただ、いじめっ子に自分に関わらないでと言っただけでした。虐められていましたし、その時も声はそれほど出せていませんでした。けれど、私はいつの間にか殴ったことにされて、両親にはそれよりもっと殴られました。

ずうっと私は犬に愚痴を吐き続けていました。大きなその体を抱き締めて、その毛に顔を埋めてずうっと。毎日のように愚痴を吐き出していました。吐き出せば楽になるというのは本当で、いつも私はぐっすり眠れましたし、次の日には不思議なほどに朗らかな気持ちで起きれました。犬にはそれはもう、何も遠慮せず何時間もずうっと愚痴を言い続けていました。両親の私に対することや、いじめられていることなど。私はよく、”〇〇なんて消えちゃえばいいのに”と、いじめっ子の名前を言っていました。その時だけ、犬がこちらを見つめながら尻尾を振っていました。

ある日、両親が家に居ませんでした。パチンコにでも行っているのだろうと思い、私は何も考えずに部屋の隅で眠りました。次の日の朝も、両親は居ませんでした。何処かに行っているのだろうと思い、私は何も考えず学校へ行き、そこでいじめっ子が行方不明だという説明を先生から聞きました。けれど、私はいじめっ子が居なくなった方が嬉しかったので、帰って犬にそのことを話してから、何も考えず部屋の隅で眠りました。

その次の日の朝も、両親は居ませんでした。私はふと、捨てられたのではないかという考えが浮かびました。犬に不安を打ち明けいる時に、ちょうど、”おとうさんとおかあさんは帰ってくるのかな”と、言葉をこぼした時に。その時はまだ親に愛があったが故に、私は怖くなったのです。今思えばもう、両親からの愛情はもうなかったのでしょう。

ひとしきり泣いて、学校へ行きました。学校でも虐められていましたが、給食があるのでいかねばならなかったのです。帰っても、両親は居ませんでした。また泣いて、犬に不安を打ち明けて、ようやく落ち着いて。犬を抱き締めて眠ってしまいました。目を覚ましたのは、鈍い痛みと、頭から流れる温かい何かの感触です。見れば、父親が酒瓶で私を殴ったようでした。床にはガラス片が散らばり、赤い雫がポトポトと床に落ちるのが見えました。どうやら、私の頭から血が流れていたのです。

母親も焦ることもなく、それどころか父親をけしかけていたようでした。その時にようやく、私は両親から愛されていないのだと悟りました。私は裸足のまま玄関から逃げ出し、脚に痛みを感じながら少し遠くの公園までやってきました。ベンチで足を見れば、ガラス片を踏んだのか、アスファルトの床に負けたのか、足の裏はズタズタになっていました。砂だらけで、触る気にさえなれませんでした。

近くで音がして見れば、犬が私の近くにいました。私は足の痛みを無視して犬に近づき抱き締め、さめざめと泣きました。泣きつかれれば怒りが来るもので、今度は両親への恨み言を犬に暫く聞かせ続け、”おとうさんもおかあさんもだいっきらい”と言って、私は公園のベンチでそのまま眠りました。犬は、ずうっと私の膝に前足を置いて、私のことをじっと見つめていました。尻尾は、振っていなかった気がします。

次の日の朝、その時期は夏だったこともあり、暑さで目が覚めました。犬はもういなくて、犬も私を捨ててしまったのだとまた泣きました。けれど、それでもお腹は空くものです。給食を食べるために、学校に行くために、私は家に戻りました。

家の床は赤い水が一面を覆っていましたが、なんとかランドセルをタンスから取り出して、私は学校へ行きました。そして帰って見れば、警察が沢山家の前にいました。そこで知ったのは、両親がキッチンで死んでいたと言うことです。警察の人が言うには犬が、私の両親を殺したと。警察が言うには、死体は食い荒らされており、近くにこの犬の毛が落ちていたと言うのです。

けれど、その時私のすぐ近くにいた犬はまったく赤く汚れてもいませんし、警察犬も反応していませんでした。そうこうして警察と話しているうちに、私の足に気付かれました。もう痛みを感じておらず放置していたのですが、気付くのが遅れていれば私は足を切らなければならなかったそうです。

ここまで話していてどうかと思うのですが、私は犬が怖いです。いえ、昔飼っていたと言ってましたよね、あの犬です。今も一緒に住んでるんですよ。今年で36歳でしょうか。ええ、元気ですよ。毎日散歩に行きますし、ご飯も沢山食べています。ただ、なぜここまで長生きなのかがわからなくて、少し怖いのです。そう言えば一度も、あの犬が吠えた声も吠えた姿も見たことがないのです。なぜ、でしょうかね?

二話
ええ、あの家は気味が悪かったです。外では子供に愛を持って接しているように見えて、何も配慮していない。隠れて煙草を押し付けていたり、脚を踏んでも気にしなかったり、異様に袖をまくることを拒否させたり。まあ、今にしてみれば虐待だったのでしょう。

あ、子供の近くに犬がいたような……すいませんね、もう歳でしょうか、犬の見た目が思い出せないんです。ただ、大きかったことは覚えています。私の飼っているハスキーより大きかったので、犬種が気になったことを覚えています。ただ、何故かどんな見た目なのかだけ思い出せません。あれほど大きいなら印象に残ると思うんですけど……

私の子供が昔、行方不明になったんです。それも、あの犬を追いかけた後から直ぐに。行方不明届けを出してから知ったことですが、あの子はいじめをしていたらしいんです。それも、あの家の子供に。あの家の子供が見当たらない時は、あの犬をいじめていたそうです。爆竹を投げたり川に落としたり…どこで間違えたのかわからない程、ひどいことをしていました。見つけたら、説教だなと思っていましたが…今も見つかっていません。もう二十年近く前のことです。

一時は、あの家の子供にも事情を聞きました。その子はいじめられていた事は知っていましたし、担任の教師や親にも相談したらしいですが…変わることはなかったそうです。私はその時、憤慨したことを覚えています。その子供にではなく、その子供を取り巻く環境にです。そして、その子供の心が壊れることなく成長しているのは、あの犬のおかげなんだろうと、少し高いご飯をその犬に与えたこともあります。

私はその時、ハスキーのぐーとゴールデンレトリバーのキンパといっしょに暮らしていたので、オススメの散歩コースやドッグランの場所を教えたりもしました。その子供といっしょにいる犬は大きいものの、吠えたことがないので小さい子供に人気があります。背に乗られても落とすことはなく、ゆっくり優しく歩くことだって出来る賢い犬でした。

暫くして、あの家は事件に遭いました。子供の両親が殺されていたのです。キッチンで。私はその時、監察医だったので死体もみました。確かに食い荒らされていましたが…犬の歯型ではありませんでした。レトリバーに皮を噛ませて確かめましたが、一致しません。それよりも、人間のような…それも子供の歯型に見えました。ああ勿論レトリバーに噛ませたのは人間の皮ではなく豚の皮ですよ。

子供の歯型、ですがあの家の子供ではありません。殺されたとされる時刻、深夜0時、その時はベンチで眠っていたのですから。監視カメラにもその映像はあります。近くにあの犬もいました。深夜2時頃、その犬は子供の自宅に向かい、扉を開けれず戻ってきたとされています。つまり、当時の推測であった”犬が殺した”というのは誤りということです。どうせ、キッチンにたまたま落ちていた毛と死体の状況から見ての推測だったんでしょうよ。

その後、私はその子供を金銭的に支援しつつ、見守ってきました。しかし、私はずっと恐れていることがあります。歯型のことです。あの事件で唯一アリバイがないのは、行方不明である私の子供なんです。有り得ない話です。有り得るわけのない話です。ですが、私は時折夢に見るのです。我が子が人を貪る姿を…

三話
ああー、あの家? 確かによく通報されていたねぇ…でも、いつも厳重注意で終わっていたよ。確か、犬の吠える声がうるさいとかなんとか。でも、ちょうど50年前くらいに一家が丸ごと引っ越してねぇ…犬は置いていかれてたよ。でも、新しい家族が来たらピタリと吠える声が止まったね。そういえばその家族の子供、腕が変色していたんだよ。こう、墨みたいな。で、それに気付いた母親が思いっきりビンタしてね、家に放り込んでいたよ。それって虐待だろう? だから私は注意したんだがねぇ…母親は煙草の煙を吹きかけてくるし、父親は物を投げてくるし。だいぶおかしな家族だったよ。

でも、意外と外面を作るのが上手くてね。あれが早朝の出来事だったのもあって、いつの間にか溶け込んでいた。彼奴等が愛を語っているのが薄ら寒くてね、距離を置いたよ。子供を小学校に行かせるのは義務さ、だから彼奴等も子供を小学校に行かせてた。服は自分で洗わせ、飯は給食だけで、仕事と称してギャンブルギャンブル…この街の皆んなは真面目で、ちょっと遠出しないと賭事もパチンコもできなかったからね、片田舎だし。だから彼奴等の本性がバレてなかった。

そうだったそうだった、あの事件のインタビューだったね。えーっと、両親同時殺害事件だったっよね。そう親が食い殺されてたやつ。ぶっちゃけ私はせいせいしたけどね、一丁前に猫を被ってたから他の皆んなは悲しんでたよ。最初はあの家の犬が殺したんだ! って話だったけど、監察医が否定したんだよね。でも、どの動物が殺したかまでは公表してなかった。だからよく陰謀論だとかそんなのに使われてもいたね。

でも、彼奴等二人が殺される理由がわからなくてね。あれでも外面はしっかりしてたんだ。それが”食い殺される”って、何があったんだよって言いたくなる。でもまあ、厄ネタなんだろうね、こういう死に方をするってことは。この地域にオカルト的なのはないんだがねぇ……これで人間が起こした事件だったら別の意味で怖いよ。

オカルト的なのが無いのは本当かって? 本当に決まっているだろう。ジジイをなめたらあかんよ。ダムで人が死んだとかはあるけど、そこが心霊スポットになっているわけでもないし、よくわからない神社とかがあるわけでもない。ましてや民間童謡に”そう”いうものが存在してるわけでもない。まあつまんない町だね。

ん? 件の民家に行っても誰もいなかったって? そりゃ十年ちょっと前に犬と一緒に引っ越してるんだからいないよ。最初に話してほしかった? 私と話す前に行ってるのに? それでわざわざ私に文句を言わないでくれ。しかも君が行こうとしてるとか私が知るわけないんだから事前連絡してもらえると思うな。

四話
で、何を話していたんやっけな。そうそう南雲先生の小説の話や。題名から何から何まで独特でね、好きな人はとことん好きって感じの短編小説をたまーに書くんよ。あ、一応ネット公開されてるから見てみ。んで、なんで俺がその小説を好きなのかって言うと、世界観。こう、説明しきらない奥深さのある世界観なんよ。あ、もっちろん個人の感想ね。で、もう二年くらい更新されなくてね、最後に出した小説がディソナンスのパ・ド・ドゥなんよ。不思議な鏡のアリスっていう童話モチーフのやつから一転してんのもおもろいんやけど、短めなんよね。でも、ちゃあんと満足感があった。単語単語に意味を込めてるんやろなって感じたもん。そんな小説何やけど、呪いの小説とか言われててな? なんでも、それを子供に読み聞かせたら狂ってしまうとか。んなわけあるかいってね。しかも、小難しい感じやから読み聞かせに向かなさすぎる。なんでこんな噂たっとんかな、アンチの仕業かな、と思うやん? 実はこの噂を流したのは霊媒師らしいねん。これも噂やから信憑性はないけどな。で、俺の子供に読み聞かせてみたわけ。普通に何もなかったわ。

題:ディソナンスのパ・ド・ドゥ
 少年と少女が踊っている。ひどいヒドい音の中で。
 不協和音ではない。ただ、どこか「嫌になる」音。その音が曲となって木霊する室内で、二人の子供が踊っている。地下室だろうか、窓もなく、扉が一つしかない50畳の部屋で、鏡に囲まれた広い部屋で、取りつかれたように踊っている。
 一人は14歳ほどだろうか、短く切った髪の毛、端麗とした顔立ち、日焼けして少し茶色となった肌、しっかりとした体格。もう一人はどうだろうか。肩甲骨のあたりまで伸ばされた茶色の髪、保護欲や母性を唆る可憐な雰囲気、美麗な顔立ちの細身な……12歳ほどに見える子供である。
 二人は何か言葉を紡ぎながら踊っている。『白鳥の湖』第3幕より ブラック・スワンのパ・ド・ドゥなのだろうか。作曲はチャイコフスキーのはずである。最も華やかかつ難易度の高い見せ場の一つだということを覚えている。悪魔ロットバルトの娘オディール。それが白鳥オデットに化け、ジークフリート王子を欺くシーン……高度なテクニックと妖艶な魅力が要求されるのだが、この二人にはさほど難しくはないらしい。音もどうやら、それをなぞっているようだ。嫌になる…不愉快なわけではなく、ただ不快な…ヒドい音であれど、今の二人には完璧と言えるほど合致している。今の二人の、その異様さと合致しているのだ。
 ふと、二人が踊るのを止めた。音は依然として鳴り響いている。いや、依然ではない。依然だというには変化がありすぎている。それまでは曲の体を保っていた音が、早送りと巻き戻しを同時に流しているような、そんな状態で、鳴り響いているのだ。
 二人の目は、この明かりも星もない夜のように暗い部屋では見えない。同じ理由で、詳しい表情も。ただ、二人が焦っていることは解る。パニックとも言うべきか、闇雲に歩き回り、叫び、壁を叩いている。音からして、血が出るほど叩いていそうだ。
 だが、ここで気付いた事がある。それまで少女だと思っていた長髪の子供が男であり、逆に少年だと思っていた短髪の子供が女であるということだ。声では判別がつかなかったが、会話を聞いて今、気付いたのだ。私が王子役をやったからだとか、手の怪我は大丈夫だとか、そんな声が聞こえたからだ。先程まで濃霧のように濁り聞き取れなかった声が、急に霧が晴れたように滑らかに、はっきりと聞こえたのだ。
 だからこそ、おかしいのだ。声は濁っていたにも関わらずはっきりと聞こえていたこの音が、声が透き通っている今もなお、大きく鮮明に鳴り響いていることが。私の知見の中でも指折り数えられる程には鮮明であり、オープンリールを使っているのだろうとは思っていた。けれど、私がもつオープンリールは世界でも有数のものだと、価値をつけれないほどのものだと自負している。親友と共に手に入れた、尊いものだ。だが、この音はそれで再生したレコードの音よりも”異様に”滑らかなのだ。
 それが近づいてくるように大きくなっている。いや、事実近づいているのだろう。私がこの様になって暫くだ。心音の代わりに機械的な歯車の音がするこの様になって暫くなのだ。それもこの音のせいだと結論付ければ説明が出来る。
 二人は落ち着いている。落ち着かざるを得ないというのが正しいのだろうか。たった二人で、何処ともわからぬ場所で踊っていたのだ。二人の会話を信用するのならば、この二人はまだそれが踊れるほど技術もないはずなのに、だ。二人は恋仲なのだろう。態度や言葉の節々からそれが感じられる。けれど、短髪の子供の様子が少し、おかしい。どうと問われれば答えることは難しいが、私の目で見ても違和感が現れている。長髪の子供も気付くと思ったが、この精神状況では厳しいか。
 だが、違和感は解った、理解できた。先程まで長髪の子供の心を心配し、その次に怪我を心配し、落ち着かせるというループだった短髪の子供の言葉が、肉付きだとか、血が綺麗だとか、お腹が空いただとか、そのような言葉に置き換わり始めているのだ。ここで私は、一つの最悪なシナリオが思いついた。必死に頭から飛ばそうにも、まるで蛇のように巻き付く想像だ。だが、考えたくはない。ここで言葉にするのは控えておこう。
 私もかなり混乱しているようだ、少し整理をしよう。まず、私はいつの間にかこの部屋を俯瞰していた。まるで本を読んでいるかのようにだ。その後、気がついたら二人が踊っていた。この時に音が曲になっていることに気付いたのだ。そして、二人が踊るのを止めた…いや、止めるより”前に”音が崩れたのだ、だからこの二人も正気に戻ってしまったのだろう。
 短髪の子供の言葉はもう支離滅裂になっている。長髪の子供も気がついた。落ち着かせようとし言葉をかけ、抱きしめている。信頼しているのだろう。けれど、私はそれが危うく見えた。何故かはっきりと見えた短髪の子供の表情は壮絶なものだったからだ。目は血走り、よだれはこぼれ、まるでカルトのような狂った視線だった。頬は異様に痩せこけていた。そして、私が想像してしまった最悪なシナリオは起こってしまった。あとに残ったのは、静かに横たわる”子供だった何か”と、笑みがあふれ、けれど涙が流れながらも血肉を貪る”長髪の子供”であった。嗚咽し、叫び、けれども貪る長髪の子供だったのだ。あぁなるほど、そうか、変質なのか。なぜあの曲だったのかがようやく、最期にようやく理解できた。
 部屋が狭くなっている気がする。私も一緒に消えるのだろうか。だが、それのほうがいいのだろう。私も、それのほうが良い。
をお読みください。

小説本文=”

一話
私はそれはもう要領の悪い子供でした。よく怒られて、言い訳も思いつかなくて、反論する勇気もなくて。いつも飼っている犬に愚痴を言っていました。何の犬種かは覚えていないんですが、子供ながらに大きい犬だとは思っていました。黒色のキレイな毛並みで、カッコいい顔立ちをしていました。けれど物心がつく前から家に居た犬で、私が唯一安心して話せる相手でもありました。

ある時は花瓶を割ったと怒られました。私が帰って来たときには既に割れていましたし、何より音で気付くはずなのに怒られていました。今思えば、あれは怒る口実だったんでしょうか。
ある時は近所の子供を殴ったと怒られました。私はただ、いじめっ子に自分に関わらないでと言っただけでした。虐められていましたし、その時も声はそれほど出せていませんでした。けれど、私はいつの間にか殴ったことにされて、両親にはそれよりもっと殴られました。

ずうっと私は犬に愚痴を吐き続けていました。大きなその体を抱き締めて、その毛に顔を埋めてずうっと。毎日のように愚痴を吐き出していました。吐き出せば楽になるというのは本当で、いつも私はぐっすり眠れましたし、次の日には不思議なほどに朗らかな気持ちで起きれました。犬にはそれはもう、何も遠慮せず何時間もずうっと愚痴を言い続けていました。両親の私に対することや、いじめられていることなど。私はよく、”〇〇なんて消えちゃえばいいのに”と、いじめっ子の名前を言っていました。その時だけ、犬がこちらを見つめながら尻尾を振っていました。

ある日、両親が家に居ませんでした。パチンコにでも行っているのだろうと思い、私は何も考えずに部屋の隅で眠りました。次の日の朝も、両親は居ませんでした。何処かに行っているのだろうと思い、私は何も考えず学校へ行き、そこでいじめっ子が行方不明だという説明を先生から聞きました。けれど、私はいじめっ子が居なくなった方が嬉しかったので、帰って犬にそのことを話してから、何も考えず部屋の隅で眠りました。

その次の日の朝も、両親は居ませんでした。私はふと、捨てられたのではないかという考えが浮かびました。犬に不安を打ち明けいる時に、ちょうど、”おとうさんとおかあさんは帰ってくるのかな”と、言葉をこぼした時に。その時はまだ親に愛があったが故に、私は怖くなったのです。今思えばもう、両親からの愛情はもうなかったのでしょう。

ひとしきり泣いて、学校へ行きました。学校でも虐められていましたが、給食があるのでいかねばならなかったのです。帰っても、両親は居ませんでした。また泣いて、犬に不安を打ち明けて、ようやく落ち着いて。犬を抱き締めて眠ってしまいました。目を覚ましたのは、鈍い痛みと、頭から流れる温かい何かの感触です。見れば、父親が酒瓶で私を殴ったようでした。床にはガラス片が散らばり、赤い雫がポトポトと床に落ちるのが見えました。どうやら、私の頭から血が流れていたのです。

母親も焦ることもなく、それどころか父親をけしかけていたようでした。その時にようやく、私は両親から愛されていないのだと悟りました。私は裸足のまま玄関から逃げ出し、脚に痛みを感じながら少し遠くの公園までやってきました。ベンチで足を見れば、ガラス片を踏んだのか、アスファルトの床に負けたのか、足の裏はズタズタになっていました。砂だらけで、触る気にさえなれませんでした。

近くで音がして見れば、犬が私の近くにいました。私は足の痛みを無視して犬に近づき抱き締め、さめざめと泣きました。泣きつかれれば怒りが来るもので、今度は両親への恨み言を犬に暫く聞かせ続け、”おとうさんもおかあさんもだいっきらい”と言って、私は公園のベンチでそのまま眠りました。犬は、ずうっと私の膝に前足を置いて、私のことをじっと見つめていました。尻尾は、振っていなかった気がします。

次の日の朝、その時期は夏だったこともあり、暑さで目が覚めました。犬はもういなくて、犬も私を捨ててしまったのだとまた泣きました。けれど、それでもお腹は空くものです。給食を食べるために、学校に行くために、私は家に戻りました。

家の床は赤い水が一面を覆っていましたが、なんとかランドセルをタンスから取り出して、私は学校へ行きました。そして帰って見れば、警察が沢山家の前にいました。そこで知ったのは、両親がキッチンで死んでいたと言うことです。警察の人が言うには犬が、私の両親を殺したと。警察が言うには、死体は食い荒らされており、近くにこの犬の毛が落ちていたと言うのです。

けれど、その時私のすぐ近くにいた犬はまったく赤く汚れてもいませんし、警察犬も反応していませんでした。そうこうして警察と話しているうちに、私の足に気付かれました。もう痛みを感じておらず放置していたのですが、気付くのが遅れていれば私は足を切らなければならなかったそうです。

ここまで話していてどうかと思うのですが、私は犬が怖いです。いえ、昔飼っていたと言ってましたよね、あの犬です。今も一緒に住んでるんですよ。今年で36歳でしょうか。ええ、元気ですよ。毎日散歩に行きますし、ご飯も沢山食べています。ただ、なぜここまで長生きなのかがわからなくて、少し怖いのです。そう言えば一度も、あの犬が吠えた声も吠えた姿も見たことがないのです。なぜ、でしょうかね?

二話
ええ、あの家は気味が悪かったです。外では子供に愛を持って接しているように見えて、何も配慮していない。隠れて煙草を押し付けていたり、脚を踏んでも気にしなかったり、異様に袖をまくることを拒否させたり。まあ、今にしてみれば虐待だったのでしょう。

あ、子供の近くに犬がいたような……すいませんね、もう歳でしょうか、犬の見た目が思い出せないんです。ただ、大きかったことは覚えています。私の飼っているハスキーより大きかったので、犬種が気になったことを覚えています。ただ、何故かどんな見た目なのかだけ思い出せません。あれほど大きいなら印象に残ると思うんですけど……

私の子供が昔、行方不明になったんです。それも、あの犬を追いかけた後から直ぐに。行方不明届けを出してから知ったことですが、あの子はいじめをしていたらしいんです。それも、あの家の子供に。あの家の子供が見当たらない時は、あの犬をいじめていたそうです。爆竹を投げたり川に落としたり…どこで間違えたのかわからない程、ひどいことをしていました。見つけたら、説教だなと思っていましたが…今も見つかっていません。もう二十年近く前のことです。

一時は、あの家の子供にも事情を聞きました。その子はいじめられていた事は知っていましたし、担任の教師や親にも相談したらしいですが…変わることはなかったそうです。私はその時、憤慨したことを覚えています。その子供にではなく、その子供を取り巻く環境にです。そして、その子供の心が壊れることなく成長しているのは、あの犬のおかげなんだろうと、少し高いご飯をその犬に与えたこともあります。

私はその時、ハスキーのぐーとゴールデンレトリバーのキンパといっしょに暮らしていたので、オススメの散歩コースやドッグランの場所を教えたりもしました。その子供といっしょにいる犬は大きいものの、吠えたことがないので小さい子供に人気があります。背に乗られても落とすことはなく、ゆっくり優しく歩くことだって出来る賢い犬でした。

暫くして、あの家は事件に遭いました。子供の両親が殺されていたのです。キッチンで。私はその時、監察医だったので死体もみました。確かに食い荒らされていましたが…犬の歯型ではありませんでした。レトリバーに皮を噛ませて確かめましたが、一致しません。それよりも、人間のような…それも子供の歯型に見えました。ああ勿論レトリバーに噛ませたのは人間の皮ではなく豚の皮ですよ。

子供の歯型、ですがあの家の子供ではありません。殺されたとされる時刻、深夜0時、その時はベンチで眠っていたのですから。監視カメラにもその映像はあります。近くにあの犬もいました。深夜2時頃、その犬は子供の自宅に向かい、扉を開けれず戻ってきたとされています。つまり、当時の推測であった”犬が殺した”というのは誤りということです。どうせ、キッチンにたまたま落ちていた毛と死体の状況から見ての推測だったんでしょうよ。

その後、私はその子供を金銭的に支援しつつ、見守ってきました。しかし、私はずっと恐れていることがあります。歯型のことです。あの事件で唯一アリバイがないのは、行方不明である私の子供なんです。有り得ない話です。有り得るわけのない話です。ですが、私は時折夢に見るのです。我が子が人を貪る姿を…

三話
ああー、あの家? 確かによく通報されていたねぇ…でも、いつも厳重注意で終わっていたよ。確か、犬の吠える声がうるさいとかなんとか。でも、ちょうど50年前くらいに一家が丸ごと引っ越してねぇ…犬は置いていかれてたよ。でも、新しい家族が来たらピタリと吠える声が止まったね。そういえばその家族の子供、腕が変色していたんだよ。こう、墨みたいな。で、それに気付いた母親が思いっきりビンタしてね、家に放り込んでいたよ。それって虐待だろう? だから私は注意したんだがねぇ…母親は煙草の煙を吹きかけてくるし、父親は物を投げてくるし。だいぶおかしな家族だったよ。

でも、意外と外面を作るのが上手くてね。あれが早朝の出来事だったのもあって、いつの間にか溶け込んでいた。彼奴等が愛を語っているのが薄ら寒くてね、距離を置いたよ。子供を小学校に行かせるのは義務さ、だから彼奴等も子供を小学校に行かせてた。服は自分で洗わせ、飯は給食だけで、仕事と称してギャンブルギャンブル…この街の皆んなは真面目で、ちょっと遠出しないと賭事もパチンコもできなかったからね、片田舎だし。だから彼奴等の本性がバレてなかった。

そうだったそうだった、あの事件のインタビューだったね。えーっと、両親同時殺害事件だったっよね。そう親が食い殺されてたやつ。ぶっちゃけ私はせいせいしたけどね、一丁前に猫を被ってたから他の皆んなは悲しんでたよ。最初はあの家の犬が殺したんだ! って話だったけど、監察医が否定したんだよね。でも、どの動物が殺したかまでは公表してなかった。だからよく陰謀論だとかそんなのに使われてもいたね。

でも、彼奴等二人が殺される理由がわからなくてね。あれでも外面はしっかりしてたんだ。それが”食い殺される”って、何があったんだよって言いたくなる。でもまあ、厄ネタなんだろうね、こういう死に方をするってことは。この地域にオカルト的なのはないんだがねぇ……これで人間が起こした事件だったら別の意味で怖いよ。

オカルト的なのが無いのは本当かって? 本当に決まっているだろう。ジジイをなめたらあかんよ。ダムで人が死んだとかはあるけど、そこが心霊スポットになっているわけでもないし、よくわからない神社とかがあるわけでもない。ましてや民間童謡に”そう”いうものが存在してるわけでもない。まあつまんない町だね。

ん? 件の民家に行っても誰もいなかったって? そりゃ十年ちょっと前に犬と一緒に引っ越してるんだからいないよ。最初に話してほしかった? 私と話す前に行ってるのに? それでわざわざ私に文句を言わないでくれ。しかも君が行こうとしてるとか私が知るわけないんだから事前連絡してもらえると思うな。

四話
で、何を話していたんやっけな。そうそう南雲先生の小説の話や。題名から何から何まで独特でね、好きな人はとことん好きって感じの短編小説をたまーに書くんよ。あ、一応ネット公開されてるから見てみ。んで、なんで俺がその小説を好きなのかって言うと、世界観。こう、説明しきらない奥深さのある世界観なんよ。あ、もっちろん個人の感想ね。で、もう二年くらい更新されなくてね、最後に出した小説がディソナンスのパ・ド・ドゥなんよ。不思議な鏡のアリスっていう童話モチーフのやつから一転してんのもおもろいんやけど、短めなんよね。でも、ちゃあんと満足感があった。単語単語に意味を込めてるんやろなって感じたもん。そんな小説何やけど、呪いの小説とか言われててな? なんでも、それを子供に読み聞かせたら狂ってしまうとか。んなわけあるかいってね。しかも、小難しい感じやから読み聞かせに向かなさすぎる。なんでこんな噂たっとんかな、アンチの仕業かな、と思うやん? 実はこの噂を流したのは霊媒師らしいねん。これも噂やから信憑性はないけどな。で、俺の子供に読み聞かせてみたわけ。普通に何もなかったわ。

題:ディソナンスのパ・ド・ドゥ
 少年と少女が踊っている。ひどいヒドい音の中で。
 不協和音ではない。ただ、どこか「嫌になる」音。その音が曲となって木霊する室内で、二人の子供が踊っている。地下室だろうか、窓もなく、扉が一つしかない50畳の部屋で、鏡に囲まれた広い部屋で、取りつかれたように踊っている。
 一人は14歳ほどだろうか、短く切った髪の毛、端麗とした顔立ち、日焼けして少し茶色となった肌、しっかりとした体格。もう一人はどうだろうか。肩甲骨のあたりまで伸ばされた茶色の髪、保護欲や母性を唆る可憐な雰囲気、美麗な顔立ちの細身な……12歳ほどに見える子供である。
 二人は何か言葉を紡ぎながら踊っている。『白鳥の湖』第3幕より ブラック・スワンのパ・ド・ドゥなのだろうか。作曲はチャイコフスキーのはずである。最も華やかかつ難易度の高い見せ場の一つだということを覚えている。悪魔ロットバルトの娘オディール。それが白鳥オデットに化け、ジークフリート王子を欺くシーン……高度なテクニックと妖艶な魅力が要求されるのだが、この二人にはさほど難しくはないらしい。音もどうやら、それをなぞっているようだ。嫌になる…不愉快なわけではなく、ただ不快な…ヒドい音であれど、今の二人には完璧と言えるほど合致している。今の二人の、その異様さと合致しているのだ。
 ふと、二人が踊るのを止めた。音は依然として鳴り響いている。いや、依然ではない。依然だというには変化がありすぎている。それまでは曲の体を保っていた音が、早送りと巻き戻しを同時に流しているような、そんな状態で、鳴り響いているのだ。
 二人の目は、この明かりも星もない夜のように暗い部屋では見えない。同じ理由で、詳しい表情も。ただ、二人が焦っていることは解る。パニックとも言うべきか、闇雲に歩き回り、叫び、壁を叩いている。音からして、血が出るほど叩いていそうだ。
 だが、ここで気付いた事がある。それまで少女だと思っていた長髪の子供が男であり、逆に少年だと思っていた短髪の子供が女であるということだ。声では判別がつかなかったが、会話を聞いて今、気付いたのだ。私が王子役をやったからだとか、手の怪我は大丈夫だとか、そんな声が聞こえたからだ。先程まで濃霧のように濁り聞き取れなかった声が、急に霧が晴れたように滑らかに、はっきりと聞こえたのだ。
 だからこそ、おかしいのだ。声は濁っていたにも関わらずはっきりと聞こえていたこの音が、声が透き通っている今もなお、大きく鮮明に鳴り響いていることが。私の知見の中でも指折り数えられる程には鮮明であり、オープンリールを使っているのだろうとは思っていた。けれど、私がもつオープンリールは世界でも有数のものだと、価値をつけれないほどのものだと自負している。親友と共に手に入れた、尊いものだ。だが、この音はそれで再生したレコードの音よりも”異様に”滑らかなのだ。
 それが近づいてくるように大きくなっている。いや、事実近づいているのだろう。私がこの様になって暫くだ。心音の代わりに機械的な歯車の音がするこの様になって暫くなのだ。それもこの音のせいだと結論付ければ説明が出来る。
 二人は落ち着いている。落ち着かざるを得ないというのが正しいのだろうか。たった二人で、何処ともわからぬ場所で踊っていたのだ。二人の会話を信用するのならば、この二人はまだそれが踊れるほど技術もないはずなのに、だ。二人は恋仲なのだろう。態度や言葉の節々からそれが感じられる。けれど、短髪の子供の様子が少し、おかしい。どうと問われれば答えることは難しいが、私の目で見ても違和感が現れている。長髪の子供も気付くと思ったが、この精神状況では厳しいか。
 だが、違和感は解った、理解できた。先程まで長髪の子供の心を心配し、その次に怪我を心配し、落ち着かせるというループだった短髪の子供の言葉が、肉付きだとか、血が綺麗だとか、お腹が空いただとか、そのような言葉に置き換わり始めているのだ。ここで私は、一つの最悪なシナリオが思いついた。必死に頭から飛ばそうにも、まるで蛇のように巻き付く想像だ。だが、考えたくはない。ここで言葉にするのは控えておこう。
 私もかなり混乱しているようだ、少し整理をしよう。まず、私はいつの間にかこの部屋を俯瞰していた。まるで本を読んでいるかのようにだ。その後、気がついたら二人が踊っていた。この時に音が曲になっていることに気付いたのだ。そして、二人が踊るのを止めた…いや、止めるより”前に”音が崩れたのだ、だからこの二人も正気に戻ってしまったのだろう。
 短髪の子供の言葉はもう支離滅裂になっている。長髪の子供も気がついた。落ち着かせようとし言葉をかけ、抱きしめている。信頼しているのだろう。けれど、私はそれが危うく見えた。何故かはっきりと見えた短髪の子供の表情は壮絶なものだったからだ。目は血走り、よだれはこぼれ、まるでカルトのような狂った視線だった。頬は異様に痩せこけていた。そして、私が想像してしまった最悪なシナリオは起こってしまった。あとに残ったのは、静かに横たわる”子供だった何か”と、笑みがあふれ、けれど涙が流れながらも血肉を貪る”長髪の子供”であった。嗚咽し、叫び、けれども貪る長髪の子供だったのだ。あぁなるほど、そうか、変質なのか。なぜあの曲だったのかがようやく、最期にようやく理解できた。
 部屋が狭くなっている気がする。私も一緒に消えるのだろうか。だが、それのほうがいいのだろう。私も、それのほうが良い。
”

── 了 ──

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