「双生児」
「大丈夫ですか貴方?」
「とりあえず俺の小屋に連れて行くか……」
最後にその言葉を聞いて私は意識を手放した。
目が覚めたときには、
見知らぬ天井、外とは違う温かい寝床、そして、
食欲を掻き立てる匂いが部屋に漂っていた。
その匂いに釣られてしまったのか、
私はムクリと上半身を持ち上げて周りを確認した。
木の小屋の一室…そう考えることが出来るぐらいの大きさだった。
めまいをする体を持ち上げてベッドから立つと床がきしみ、
その音のせいか、ドタ、バタという音がこの部屋に向かってくる
のが分かった。
巨人や雪崩れに音が近しいことが、余計に恐怖を駆り立てた。
部屋の扉が開いた時には、私は部屋の一隅にうずくまっていた。
立て付けが悪いせいか、一度大きく、ガタッゴンと聞こえて開いた。
開いた扉の前には雪男に見紛うほどの大きな身長と
立派なヒゲをたくわえた四十代ほどの男性が立っていた。
その男は私に
「やっと起きたか、心配していたのだよ?」そう言葉を私に掛けた。
しかし見知らぬ人に会うという事に私の原始の本能を駆り立てた。
「あなたはいったい誰ですか?」
すると男性は
「この小屋に住んでいる者だよ。君が吹雪の中、
倒れた所を小屋に連れてきたのだ。」そうヒゲを撫で淡々と語った。
まるでいつものことみたいに、すると彼は
「腹減ってるか?すいてるなら、ちょうど今できたが喰うか?」
その言葉とこの部屋に漂う良い匂いのせいで腹がなった。
致し方ないことだ。
そして私は食卓に出た。
大きなテーブルに湯気が出ているスープにパンなどの料理が数多く
食卓に並んでいた。
私が最初に手を取ったのは熱々なコンソメスープ、
それを勢い良く喉に流し込んだ。
人参、キャベツ、トウモロコシ、そして
最大限コンソメの風味を吸った腸詰、
そのスープは最高の逸品だった。
しかしこんな山頂に鹿や山羊でもいるのだろうか?
私はまだ見たことが無い。
でもこの腸詰は最高だ、やや甘く、口に放り込めば肉汁が溢れる。
その光景を思い浮かべれば、口に風味が蘇る。
この最高の体験を再現するため私はこの腸詰について聞くことにした。
「この腸詰はなんの動物の腸詰なんですか?
あっ解りましたよ!子羊の腸詰ですか?」
そんな問いは男が浮かべている答えとは違ったようだ。
「子羊か……近しいな答えは」
そう立派なヒゲを撫でて呟いた。
私にはただ気がかりだった。
それから、吹雪が止むまでの三日間、ずっと
男性にレシピを聞き続けましたが、
頑なに彼は教えてくれませんでした。
しかし吹雪が止んで下山の準備が終わったころ。
私は男性に呼ばれ別れの晩餐が行われる事になった。
たった二人されど二人、大きなテーブルには少し寂しい人数
だがそれを埋めるほどの豪勢な料理があった。
焼き立てのパン、高山野菜のサラダ、ダチョウの丸焼きと思えるほどの七面鳥、
そしてあの腸詰が入ったコンソメスープが私の目の前にあった。
私は歓喜した。この逸品をもう一度飲めて、私は非常に満足した。
なぜならあの腸詰がこの私の臓腑に入っている事を実感
していますから。
晩餐の後、私は別れの挨拶のためリビングに行った。
私が挨拶をしようとすると、いきなり男が
「あんた…腸詰のレシピ、知りたいか?」
その言葉は非常に嬉しかった、あれがないともう私は生きていけない。
と出そうになったが、男が私の考えていることが分かったようで、
ついて来いと手招きした。
私はこうなると後ろについて行くしかなかった。
着いた先は地下室の扉の前だった。
男が再度確認したがもう関係ない。
地下室に行くと、
そこには…死体の山があった…
鉄のフックに掛けられているのは…
やや太く、豚の前足のような、指が五本ある、
筋肉質な肉塊だった。
棚には凍った前・後ろ足がない
雌と雄それぞれの死体が置いてあった。
男性は「やっぱり一般人には厳しいか…」
そう漏らしたのを聞いた。
ただ嗚咽だけが地下室に響いた。
男が続けて、
「あの腸詰は私の息子と娘の血肉を詰めた、
腸詰なんだよ。」
その言葉は私にとって一番聞きたく無かった。
腑のものがひっくり返って
今にも口から漏れ出そうになった。
すると「なぁ辛いなら吐き出せよ。」
もう辛抱ならなかった、
腸詰以外の胃の中を全て吐き出した。
全て吐き出すと、また彼が
「あの丸焼きはな、私の娘の丸焼きだ、
さぞ美味かったことだろう?」
私はこう答えるしかなかった。
「非常に不愉快だ。」
その言葉を聞いた彼は、
「まだ君には、早かったようだそして永遠に分か り合えないな。」
そう言った彼は、後ろを向き、ひたすらに非道徳倫理を熱弁した。
地下室には鈍い破裂音だけが幾度も鳴り響いた。
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–––––
私は安城浩介、大学の登山サークルの行事で
この雪山に登っていた。
しかし、私だけ逸れてしまった。
幸運なことに小さい山小屋に光がついていた。
それと小屋から良い匂いが漂ってきた。
もう視界は途切れ途切れだった。
何度か戸を叩くと、中から同い年くらいの
男性が出て来て、私を一瞥してから、
理由も聞かず小屋へ招いた。
彼は川神仁と名乗った。
彼は「暖かいご飯が今できたのだが、
食べるかい?」とありがたい事に
夕食に招かれた。私にとっては九死に一生を得た気分だった。
食卓に私が座る前から、料理が乗ってあり、
一番美味しそうなのは、いっぱいソーセージが入った、コンソメスープだった。
一瞬、川神さんの口が緩んだように見えたが、
どうでも良い。
とりあえずは吹雪が止むまでここに居よう。
食卓にて、川神さんは、「私はね、ある男性の遺産である、この小屋に二週間前に管理人として、
住んでいるのだよ。」
私は、
「なるほど、だからお若いんですね。」
と言った。
すると、
「いやいや、私も遭難した身でね、
その時助けてくれた人が、
不運な事故で無くなってしまって、
私が引き継ぐ事になったのだよ。」
そう自分の経歴を語りながら、川神さんは、
コンソメスープを見つめて、
口一杯に入れて飲み干した。
川神さんはもう寝ると行って、
彼は寝室へと行った。
私ももう寝ようと、借りた部屋に行く道中、
床が、すごく軋んだ、ある区間だけが軋むのだ、
怪しい物凄く怪しい、しかし詮索などしない、
あのソーセージは遭難した時に食べた肉と同じ人肉だったから.....
まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。