NOVEL RANK が見つけた作家
アル
23歳。小説執筆歴1ヶ月。ランキング1位・2位を独占。
NOVEL RANKは、日本語小説をAIが全文精読し、7つの基準で採点するサービスだ。 投稿作品のランキングを見ると、80点台の作品がある書き手によって独占されている。 アルさん、23歳。小説を書き始めてまだ1ヶ月。 最初の一作から、AIは「構造的な達成」を見抜いた。
気になってnoteでメッセージを送ったのが、このインタビューのはじまりだ。 作品について深く語ってくれたアルさんの言葉を読んで、AIの評価が間違っていなかったことを確信した。 才能は本物だった。
インタビュー・構成:NOVEL RANK 運営 / 2026年5月
Works
時制のない言葉
時制のない言語を学ぶと、脳が不可逆的に変化する。 主人公の時間認識が徐々に侵食されていく様を、物語の形式そのものを使って体現した作品。 エピローグに残された「翻訳不可能な真実」が、読後も消えない。
地図
記述と現実の境界が溶けていく「詰め将棋型」の恐怖。 語り手が途中で別人に入れ替わる感覚を、地の文では決して説明しない。 読者が「待てよ、その理屈だと自分も……」と気づく瞬間を設計した作品。
「現実を揺さぶる」ことについて
意識しています。
私が小説を書き始めるきっかけになったのは、小林泰三さんの『玩具修理者』に収録されている『酔歩する男』でした。初めて小説を読み始めた頃に手に取った一冊で、まさに「現実が揺さぶられる」ような感覚を覚えて、私もこんな小説を書きたいと強く思ったんです。今でもこの作品が私の一番好きな作品であり、最も影響を受けた作品でもあります。
具体的な創作プロセスとしては、プロットの段階でテーマを決めるのですが、その時点で既に「現実を揺さぶる」ような感覚が自然と立ち上がってくる感じです。意識的に狙いつつも、テーマを突き詰めていくと自然とそうなる、という両面があるかもしれません。
『地図』と『時制のない言葉』では、章を追うごとに現実感覚が段階的に変容していく構造を特に意識しました。それが小説でしか提供できない体験だと思っていますし、読者に一緒にその変容を体感してほしいと考えています。
『地図』では、怖がらせ方を「詰め将棋型」にすることを意識しました。前提を一つずつ積み上げて論理を詰めていき、読者が「待てよ、その理屈だと自分も……」と気づいてしまう構造です。語り手が途中で別人に入れ替わっていく感覚を、地の文では説明しない。第五章以降、地の文のトーンが少しずつ変化していくのですが、それを直接は説明せず、戸山が自分のノートの筆跡の変化に気づく——という作中の出来事としてだけ可視化しました。
『時制のない言葉』では、「時制のない言語を学ぶと、脳が不可逆的に変化する」という設定を、単なる背景ではなく、物語を駆動する中心軸として設計しました。この物語全体が、時間感覚を失った主人公が「線形の物語」として再構成したもの——あるいは記憶を取り戻した後に過去を再翻訳したものとして読める。エピローグで主人公は記憶を失って帰還し、ノートに残された幾何学模様を見ても理解できない。その図形こそが「翻訳不可能な真実」の象徴です。読者も、それを読むことはできない。
二作品に共通するのは、「設定が登場人物の内面を直接破壊する」構造です。そして、その変化を説明せず、文体や構造の変化として読者に気づかせる。
「読者は、説明されるのではなく、自分で気づく。その発見の瞬間こそが、この物語の怖さであり、美しさです。」
NOVEL RANKについて
Xで偶然、NOVELRANKの投稿を見かけたのがきっかけです。「小説をAIで評価する」というコンセプトが新鮮で、興味を持ってサイトを訪れました。自分の作品がどう評価されるのか、期待と不安が入り混じった気持ちで投稿したのを覚えています。
スコアを見たときは、率直に納得しました。他の作品の評価も拝見していたので、スコアの決まり方に納得感がありましたし、客観的な評価として非常に参考になりました。特に大きかったのは、自分が書く上で意識してきたことが、評価に反映されていると感じられたことです。こうした構造的な意識が評価されたことで、自分が目指してきた方向性が間違っていなかったと確信できました。
非常にポジティブに捉えています。正直なところ、もしAIが文学を「読めない」のだとしたら、私の作品が高く評価されているのが不思議なくらいです(笑)。AIだからこそ超高速で作品を隅々まで分析し、技巧や構造を正確に評価してくれるという、人間にはない魅力があると感じました。
人間の読者は感情移入や主観的な体験を通して作品と向き合い、そこには独自の豊かさがある。AIは構造や論理を精密に読み解き、客観的な評価を提示してくれる。どちらにも異なる魅力があり、それぞれが補完し合う関係だと思っています。
特に、構造的な仕掛けや技巧を意識して書いている作家にとって、それを正確に読み取ってくれる存在がいることは、とても励みになります。
今のままでも十分素晴らしいサイトだと思っています。その前提で言えば、作家同士の交流機能、ジャンル別ランキング、コメント機能などがあるとさらに楽しくなるかもしれません。
理想を言えば、NOVELRANKが単なる評価ツールにとどまらず、作家コミュニティであり、創作の学びの場であり、プロへの登竜門でもあるような場所になったら素晴らしいと思います。書き手にとっても読み手にとっても、小説の可能性を広げる場所として成長していけたら理想的ですね。
これから
構想している作品の一つに、荘子の「胡蝶の夢」をテーマにした物語があります。「夢が現実か、現実が夢か」を問いかけることで、私たちが絶対だと思っている現実も実はあやふやなものに過ぎないという哲学的視点が面白いと感じています。このテーマはSFとも相性抜群で、荘子の考えに影響を受けた私なりの物語を紡ぎたいと考えています。
『地図』では「記述と現実の境界」を、『時制のない言葉』では「時間認識の枠組み」を揺さぶりました。次は「夢と現実の相対性」——私たちが当たり前だと思っている現実そのものの曖昧さに踏み込んでいきたい。これまでの作品を振り返ると、一貫して「認知の枠組みの揺らぎ」に関心があるのだと気づきます。おそらく、これからもこのテーマを追求し続けていくのだろうと思います。
NOVELRANKでの評価を受けて、自分の方向性が間違っていなかったという確信が持てました。それが何より大きな励みになっています。これからも、読者の認知を揺さぶるような作品を書き続けていきたいです。
アル
note →「物語を紡ぐ森の奥に住むカッパ」
2002年生まれ、23歳。数年前に小説を読み始め、小林泰三『酔歩する男』に衝撃を受けて創作を開始。 認知の枠組みを揺さぶるSF・ホラーを中心に執筆している。 小説執筆歴1ヶ月で、NOVEL RANKの投稿ランキング1位・2位を獲得。 記述と現実の境界、時間認識の崩壊など、「当たり前だと思っていた認知の土台が崩れる瞬間」を描くことに関心を持つ。 現在はnoteでメンバーシップを運営しながら、荘子の「胡蝶の夢」をテーマにした次作を構想中。