氏の作品に共通するのは、感情を直接語らず、抑制された筆致で事象を淡々と描写するスタイルだ。例えば『標本』では「殺菌と消毒をし、そのうつくしい身体を戻すために隈なく洗っていく」と即物的に語ることで、語り手の狂信的な愛を際立たせる。『Irgendwo auf der Welt』の「ちょうどいい暇つぶしだと思った」と他者の悲劇を消費する主人公の冷徹な視点や、『骨壷』で「この家に見覚えがなかった」と記憶の基盤が崩壊する瞬間は、日常に潜む亀裂から底知れぬ深淵を覗かせる。こうした非人間的な、あるいは超越的な視点(『重工のメカロニカ』の元素体、『気象神群』の神々)が、人間存在の矮小さや世界の非情さを浮き彫りにし、作品に深い奥行きを与えている。