伍『オノゴロ』side;志山
杉田さんのお母様は、中々パワフルなお方でした。
二十分ほど、お母様と……オタクなお話しした後、病室を後にする。
この時間になったなら、風太をもう少し待ってたら上がりだから、一緒に帰ろうかな?と思いながらリハビリ室に向かうと、談話室で杉田さんに声をかけられた。
おや?一緒にいるのは、勢雄さんじゃないですか。
なんて、組み合わせだ?
「院内では静かにしてください…て、珍しい組み合わせですね?どっちがナンパしたんです?」
「勢雄さん!だけど、そうじゃなくて、勢雄さん、あたしたちの夢を知ってる!」
勢雄さん、驚いてますよ?
――――
「……殺される子って、ラウノか?」
と、言う勢雄さんに驚く。
ゲームでは名無しだったけど、夢の中では名前があった。そう、ラウノ、だ。
私は無言で頷いた。
「…はあぁ……」
って、勢雄さん長い溜め息を吐く。
と、無意識なのか持て余した手が、何故か杉田さんの頭を弄っている。
まあ……杉田さんも嬉しそうだし、いいの、かな。
なんか可愛い二人だな。
「同じ様なところに偶々居合わせて、脳内電波受信したってことか?」
と、落とし所を見つける勢雄さん。
――夢…だけど、それでいいのかな?
とも思う。
…………ん。
「あのですね。ここだけの話なんですけど――私が見たセイレン様が消えた時、ひとりの患者さんが亡くなったんです」
現実の事と、妄想じみた夢を繋げてもいいものか、の懸念はある。
けど、“何か”違うんだ。
それが、何かは分からないけど。
「マンガとかなら、連れてったって、やつか?」
勢雄さんでもそんなこと言うんですね。
「分かりません。そうかもしれない。分かるのは私が話したミリアには、こちらの記憶があったってだけです」
「“泣かない”てクリスが思ってたな……子供の体に大人の意識か……」
ぐるぐるぐる…。
「――なら、クリスの意識が、“繰り返してた”ってのは、何なんだろうな……」
別の疑問を投げ掛けられた。
けど、答えは出ない。
出せない。
なんて、勢雄さんと話してると、杉田さんが話しに入ってこないことに気付く。
落ち込んでる…?
――違う!入ってこられないんだ。
しくじったな…んー。
と、思ったらまたしても勢雄の手は杉田さんの頭に乗ってた。
なんだろ?この二人。
――
結局、みんなで同じような夢を見たんだね。
不思議だね、で解散となった。
「それで、なんか進展した?風花さん」
ソファを背に、床に座って。
風太の胸に、頭預けて。
「…んー?したのかな?してないんじゃないかな?みんな、自分の見てるものしか知らないしね」
お酒の代わりにホットミルク。
風太だけ、お酒ズルイ。
「“トリセツ”――俯瞰目線がないって訳か」
私は、風太にくるまって、お腹にあった傷の事を思い出していた。
――――
「数値も画像も特別異常は見当たらないね。
胃が少し荒れたから、気にしといて。まあ、言われたくないだろうけど、疲れとストレスってやつだろうから、用心しなさいね。いいね?」
検査の結果は…有り体のものだった。
夜勤の連チャンと……患者さんの死――
こればっかりは、慣れないよね。
「……良かったぁ」
と、風太の緊張の糸が切れる。
「そんなんでしょ。働いてたら誰でもあるんじゃない」
って、悪態ついたら、
…………風太さん?
「もっと大事にしてよ。君がどうかなったら、泣くよ?」
て、真剣な顔して、泣きそうにしてる。
「――そいつは一大事だ。私の風太さんを泣かせるわけにはいきませんね。でも、風太もだよ?ね」
そう言って笑いながら、役所に寄って、書類を提出して───お父さんと約束してたレストランへ向かった。
───
勢雄さんが退院して、元気がない杉田さんと時々話して――セイレン様の攻略を教えてもらって、漸く落とせた時は感無量だった。
二人して、セイレン様とのウェディングエンド見てた。
クリスが参列しているのが確認できて、「親子なんだな」って思ってたら、ホワイトアウト。
「白い――一面の霧って…」
「個別エンド……」
私と杉田さんは顔を見合わせたけど。
思い付いた言葉は憶測でしかなくて。
そしたら、
「不思議な事ってあるもんですね、で良くないですか?」
と、杉田さんが言った。
そんな杉田さんも無事退院して、私の妊娠が発覚した。
――――双子ですと?!
風太さん、ガッバってくれたまえ。
私もガンバるよ!
───
――――――そうして。
「きれいな子供たちだねぇ!見てよ」
「はいはい。風太にそっくりですよ」
「風花にもそっくりだよ!美男美女になるよ」
「――――美男なんだ」
「誰かがそう思えばそうなんだよ!」
「うんうん、わかったわかった」
「ねえ?ありがとう。ずっと一緒にいようね」
「幸せにしてくれる?」
「それを言うならさ。一緒に幸せになろう?」
風太は満面の笑みで
それを見てたら私の頬も綻んで
幸せって、こんなんでいいんだろうなって思う。
「……ねえ?見て。この子、手のひらに星があるよ」
「……単純性血管腫かしら?」
触るとぷにぷにとしてる。
「……なんか、あの時のお腹の傷跡みたいだね――」
「そうだね…」
産毛のような頭髪は細く、光が透けて銀色に見えた。
「――禿げそう……」
「風花さん?!なんてことを。男の子にはショックな言葉ですよ!」
「まあ、生まれたとき薄いと濃くなるもんだから大丈夫じゃない?」
「経験談?」
「うん。先輩方の」
風太は何故か新生児の頭のマッサージ(撫でるだけだけど)を始めた。
「摩擦で禿げるかもよ?」
って言ったら、睨まれた。
可愛いな、おい。
――――
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