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蹉跌の月──Deseo la luna.──

有城 砂卯

47,759 字

現代ファンタジー恋愛小説

"月を望む少女の初恋と、交錯する夢と現実。これは、諦念と希望が織りなす、大人のためのファンタジー。"

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伍『オノゴロ』side;志山

 
 杉田さんのお母様は、中々パワフルなお方でした。
 二十分ほど、お母様と……オタクなお話しした後、病室を後にする。

 この時間になったなら、風太をもう少し待ってたら上がりだから、一緒に帰ろうかな?と思いながらリハビリ室に向かうと、談話室で杉田さんに声をかけられた。
 おや?一緒にいるのは、勢雄さんじゃないですか。
 なんて、組み合わせだ?

「院内では静かにしてください…て、珍しい組み合わせですね?どっちがナンパしたんです?」
「勢雄さん!だけど、そうじゃなくて、勢雄さん、あたしたちの夢を知ってる!」
 勢雄さん、驚いてますよ?

 ――――

「……殺される子って、ラウノか?」

 と、言う勢雄さんに驚く。
 ゲームでは名無しだったけど、夢の中では名前があった。そう、ラウノ、だ。
 私は無言で頷いた。
 
「…はあぁ……」
 って、勢雄さん長い溜め息を吐く。
 と、無意識なのか持て余した手が、何故か杉田さんの頭を弄っている。
 まあ……杉田さんも嬉しそうだし、いいの、かな。
 なんか可愛い二人だな。

「同じ様なところに偶々居合わせて、脳内電波受信したってことか?」
 と、落とし所を見つける勢雄さん。
 ――夢…だけど、それでいいのかな?
 とも思う。
 …………ん。
 
「あのですね。ここだけの話なんですけど――私が見たセイレン様が消えた時、ひとりの患者さんが亡くなったんです」
 現実の事と、妄想じみた夢を繋げてもいいものか、の懸念はある。
 けど、“何か”違うんだ。
 それが、何かは分からないけど。
 
「マンガとかなら、連れてったって、やつか?」
 勢雄さんでもそんなこと言うんですね。
「分かりません。そうかもしれない。分かるのは私ラウノが話したミリアには、こちらの記憶があったってだけです」
「“泣かない”てクリスが思ってたな……子供の体に大人の意識か……」
 
 ぐるぐるぐる…。
 
「――なら、クリスの意識が、“繰り返してた”ってのは、何なんだろうな……」
 別の疑問を投げ掛けられた。
 けど、答えは出ない。
 出せない。
 
 なんて、勢雄さんと話してると、杉田さんが話しに入ってこないことに気付く。
 落ち込んでる…?
 ――違う!入ってこられないんだ。
 しくじったな…んー。
 と、思ったらまたしても勢雄の手は杉田さんの頭に乗ってた。
 なんだろ?この二人。

 ――

 結局、みんなで同じような夢を見たんだね。
 不思議だね、で解散となった。
 
「それで、なんか進展した?風花さん」
 ソファを背に、床に座って。
 風太の胸に、頭預けて。
 
「…んー?したのかな?してないんじゃないかな?みんな、自分の見てるものしか知らないしね」
 お酒の代わりにホットミルク。
 風太だけ、お酒ズルイ。
「“トリセツ”――俯瞰目線がないって訳か」

 私は、風太にくるまって、お腹にあった傷の事を思い出していた。

 ――――

「数値も画像も特別異常は見当たらないね。
胃が少し荒れたから、気にしといて。まあ、言われたくないだろうけど、疲れとストレスってやつだろうから、用心しなさいね。いいね?」

 検査の結果は…有り体のものだった。
 夜勤の連チャンと……患者さんの死――
 こればっかりは、慣れないよね。

「……良かったぁ」
 と、風太の緊張の糸が切れる。
「そんなんでしょ。働いてたら誰でもあるんじゃない」
 って、悪態ついたら、
 …………風太さん?
「もっと大事にしてよ。君がどうかなったら、泣くよ?」
 て、真剣な顔して、泣きそうにしてる。
「――そいつは一大事だ。私の風太さんを泣かせるわけにはいきませんね。でも、風太もだよ?ね」

 そう言って笑いながら、役所に寄って、書類を提出して───お父さんと約束してたレストランへ向かった。

───

 勢雄さんが退院して、元気がない杉田さんと時々話して――セイレン様の攻略を教えてもらって、漸く落とせた時は感無量だった。
 二人して、セイレン様とのウェディングエンド見てた。
 クリスが参列しているのが確認できて、「親子なんだな」って思ってたら、ホワイトアウト。
「白い――一面の霧って…」
「個別エンド……」

 私と杉田さんは顔を見合わせたけど。
 思い付いた言葉は憶測でしかなくて。
 そしたら、
「不思議な事ってあるもんですね、で良くないですか?」
 と、杉田さんが言った。

 そんな杉田さんも無事退院して、私の妊娠が発覚した。
 ――――双子ですと?!
 風太さん、ガッバってくれたまえ。
 私もガンバるよ!

───

 ――――――そうして。

「きれいな子供たちだねぇ!見てよ」
「はいはい。風太にそっくりですよ」
「風花にもそっくりだよ!美男美女になるよ」
「――――美男なんだ」
「誰かがそう思えばそうなんだよ!」
「うんうん、わかったわかった」

「ねえ?ありがとう。ずっと一緒にいようね」
「幸せにしてくれる?」
「それを言うならさ。一緒に幸せになろう?」

 風太は満面の笑みで
 それを見てたら私の頬も綻んで
 幸せって、こんなんでいいんだろうなって思う。

「……ねえ?見て。この子、手のひらに星があるよ」
「……単純性血管腫かしら?」
 触るとぷにぷにとしてる。

「……なんか、あの時のお腹の傷跡みたいだね――」
「そうだね…」

 産毛のような頭髪は細く、光が透けて銀色に見えた。

「――禿げそう……」
「風花さん?!なんてことを。男の子にはショックな言葉ですよ!」
「まあ、生まれたとき薄いと濃くなるもんだから大丈夫じゃない?」
「経験談?」
「うん。先輩方の」

 風太は何故か新生児の頭のマッサージ(撫でるだけだけど)を始めた。
「摩擦で禿げるかもよ?」
 って言ったら、睨まれた。
 
 可愛いな、おい。

 ――――
 
 

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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