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少女は眠っていた

玖条詩季

1,680 字

青春、夢幻、日常の異変

"日常に潜む夢幻のざわめき、そして目覚め。少女の夢が、静かに現実を侵食する。"

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少女は眠っていた。
 少女は夢を見ていた。
 
 
 
 朝、目覚まし時計の音で起きる。朝ご飯を食べて、身支度をして、学校へ行く。
「おはよう」
 昇降口で上履きに履き替えていると、友達に声をかけられた。
「おはよう。今日は早いね」
「なんとなく目が覚めちゃって」
 二人で並んで教室へ行く。
「ねえ、放課後、うち来ない?」
「いいの?」
「うん。テストも終わったしさ、一緒に遊ぼうよ」
「やった。楽しみ」
「何しようか」
「のぞみの家、何のゲームあったっけ?」
「んっとね……」
 二人で話しながら教室に入る。「おはよう」と言うと、クラスのみんなも「おはよう」と返してくれた。
「何時までいていい?」
「うーん……。お母さんに聞いてみる」
 最近までテスト勉強にうつつを抜かしていたせいか、すでに頭の中は放課後のことでいっぱいになっていた。
 授業を受けている間、普段は眠くなるのに今日は目が冴えている。放課後のことを考えるとにやけてしまう。こういう時ほど時間が長く感じられるもので、いつも以上に先生の話を聞いていなかった。
 ようやく授業が終わり、一目散に教室を出る。
「じゃあ、また後で!」
「うん」
 はやる気持ちを抑え、一度家へ戻りのぞみの家へ向かう。
 
 ——………………ピ………………
 
「……ん?」
 今何か、音がしたような。気のせいか。
 のぞみの家に着くと、すぐに出迎えてくれた。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ〜」
「久しぶりだね」
「うん。楽しみにしてた」
「お菓子持ってきたよ」
「そんな、いいのに……」
 のぞみの家に行く時、いつも似たような会話をする。
「これやらない? まだやったことないんだけど、面白そうだよ」
「へえ。やってみよう」
 二人で新作のゲームをする。のぞみの家にはたくさんのゲームがある。テレビの前でゲーム機をいじっていると、時間を忘れてしまう。
「お先に〜」
「ちょっとー、妨害しないでよ!」
 盛り上がっている時。
 
 ——…………ピピ、ピピ……………
 
 また、音が聞こえた。今度は聞き間違いじゃない。何の音だろう。
 
 ——………ピピピ、ピピピ、ピピピ
 
 やはり、音が鳴っている。せっかく楽しんでいるのに、集中できない。
 
 ——ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
 
 音がどんどん大きくなっている。耳を塞いでも否応なく聞こえてくる。
 
 ——ピピピピピピピピピピピピピピ
 
―ああもう、うるさいな!
 そう叫ぼうとした瞬間、音がぴたりと止んだ。
「止まった! よかった〜」
 これでゲームを再開できる。
 のぞみを見ると、何事もなかったかのようにゲームを続けている。まさか、音がなっている間も続けていたのだろうか。
「さっきの、何の音だったんだろうね」
 話しかけたが、応答がない。
「のぞみ?」
 もう一度声をかけたが、のぞみは反応しない。
「のぞみ⁉︎」
 肩を揺すっても、ゲームを続けるだけだ。
「ねえ、どうしたの⁉︎」
 その時、また音が聞こえた。
 
 ——……トン、トン、トン…………
 
 さっきとは違う音だ。いや、それよりも、のぞみが反応しない。
 
 ——…………り……
 
 今度は、人の声だ。なぜだか、耳に入ってくる。何だろう。この声、どこかで聞いたような……。
 その時、ぱっと視界が開けた。眩しくて、目を開けていられない。
 
 ——……り!
 
 また、誰かの声が聞こえた。何か言っている。人の名前だろうか。誰のものだろう。
 
 ——ひかり!
 
 また、声が聞こえた。今度は、はっきりと。
 そうか、分かった。私の名前だ。これは、母の声だ。
 
 ——ひかり、朝よ!
 
 ——起きなさい!
 
 
 
 少女は目を覚ました。
 いつも通りの一日が始まる。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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